ものづくり企業の選択と対策
名古屋では大手企業に当たる、ブラザー工業が発表したAIシステム導入は、資本の優位性を担保できる大企業ではトレンドの資本投入だが、この企業に限らない「ルーテイン業務の自動化」はより企業の筋肉体質化を加速し、脂肪に当たる不明瞭な要因を削ぐことで、企業内の透明性を高める役割に貢献している。
この選択は、かつてのOA(オフィスオートメーション)の時代に湧いたように、企業業務の効率化を図る流行に影響されているものだが、おしなべて右ならえすることが一概に競争力を高めるかどうかは、企業の本質次第だろう。
確かにブラザーとっては、このスキル向上によって、ものづくり企業だった方向性を企業経営ノウハウの販売としてソフトウェア企業としての性格も加えて行くことは予想できる。
企業の効率化は新興IT企業が示した結果が示す通り、ものづくり企業にとっての最大の課題は、ものづくりノウハウのソフトウエア化と、企業理念として顧客や株主へいかに業務の透明性を明確にできるかに尽きる。
製品が物理的である以上、ソフトウエア化による合理化には限界があるだけに、ノウハウと業務システムとの統合化する際の、整合性がどれだけ取れるかはソフトウエア企業と比べシビアであり、逆に言えばそれが成功すれば大きなアドバンテージにさえできる。
IT業界がここまで発達できたのは、単に効率を極めるだけでなく、関連事業への連携をつきつめながら、隙間に潜む自社の利益やチャンスを突き詰めた結果であり、その企業努力はハードウエア産業以上に過酷だったはずだ。
日本はハードウエア産業が増えすぎた結果、アメリカがその逆転のために進化させたソフトウエア化のノウハウを軽んじているだけでなく、本質を見極められないでいる限り、永久に自社リソースの最大効率化へは、程遠いだろう。