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「デジタル人民元」で中国政府が夢見る、デジタル社会の世界基軸通覇権

デジタル人民元(以降:デジ元)の発行を中国政府は世界普及に先立って、国内での使用開始をすると発表したが、富裕層の注目トレンドであるオフショア機能とマネーロンダリング手段として普及が期待される中華デジタル通貨の内容はいかほどのものか?

 

そもそも中国政府の狙いは表向きには、米アマゾンが展開しようとするリブラより先にデビューさせること大命題と発表され、当面デジ元の流通量を現状の人民元のそれを超えない量にするとは言っているが、裏向きには今デジタル特区として育てる深圳(シンセン)に金融機能を移し、人民元のオフショアの役割を、今ままならない香港から奪うための一環、その布石だと見る向きもある。

 

かつて当政府が前言撤回するシーンに慣れた我々には後者に真実味を感じるが、まずは現実的判断ともいえるし、実際国内での実証期間で結果のための時間稼ぎと、同時に香港での制圧結果次第だろう。

 

ただ、中国元はアメリカによってドルへの換金制限や、海外保有のドル資金の差し押さえの対象にされており、資金面で短期しのぎはできても、中長期においては早急に人民元の信用性を獲得しなければならず、尻に火がついている現実があり予断は赦されていないので、当局がどこまで冷静に動くかも注目される。

 

よって、当局のデジ元に対する期待値から量っても、最終的には人民元の世界基軸通貨を目指しているのは間違いないだろうが、まずは実際どこまで通貨としてのポテンシャルを擁するかの判断は、今しばらく時間を要するだろう。

 

その仮想的とされる通貨リブラとのデジタル基軸通貨争奪戦の想定を最終目的とするだろうが、リブラは西側商圏どころかアメリカ国内でさえ、既存通貨ドルの既得権益争いが進行しており、実行の可能性が今のところ極めて低いと見るのが一般的である。

 

当面では、中国国内でデジ元を年末商戦ビッグイベント「独身者デー」でのデビューが予定されているが、利用可能企業として名前が挙がっている国内大手アリババが含まれるが、9月にジャック・マーCEO辞任のタイミングは、以前から言われていたとはいえ、この動きに彼がかかわらないのは不自然ともいえる。

 

これは持論であり可能性でしかないが、マー氏はこのドル基軸通貨争奪戦については消極派だったのかもしれなくて、この可能性がアリなら中国内でもデジ元の信用性について疑問を持つ者もいることは、中国国内組織の不安定さを示すものかもしれない。

 

いずれにしても、米国の関税圧力や経済制裁によって元の引用性が大幅に目減りする今、この動きはむしろ遅いくらいだろうが、しこたま海外から知財盗用をしまくったことで得たノーリスクの技術ノウハウと、有り余るほどの人材とそれによってつくられる独自の国内市場だけで成功させれば、海外転用には十分な保障にはなるだろう。

 

ただ、その小宇宙で成功しても、その信用性はその外宇宙でどれだけ通じるかは、全く別物だ。

 

アメリカよりも強力な力技で押し切るか、心を入れ替え誠実に対応しない限り覇者への道は決して近くはないが、果たして。

 

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「デジタル人民元」はドル基軸体制を打ち壊すのか 5年をかけて研究、人民銀行の最大の切り札がついに登場(1/4) | JBpress(Japan Business Press)