くろまのパーソナル・ワークショップ

生活・仕事への分析力向上を目指し、あえて辛辣に物言います。

日産の人柱化に見る、グローバル企業間の複雑な柵

カルロス・ゴーン氏の出廷前日に、テレ東WBSの単独インタビューに応じ、日産の氏が「ガバナンス」見直しと、自身を含めた歴代経営者の責任を認める発言をした。

 

この事件の本質は、ガバナンスの本質以前に、フランスと日本の国が巻き込んだ国際企業間の代理戦争と捉えている。

米中が今しのぎを削る経済戦争と、構造は同じだと考えられる。

 

その中で、

執拗にガバナンス、ガバナンスと連呼する氏の追い詰められらゆとりの無さが痛々しいが彼は言わば、

 

日本のグローバル企業全体が、ぶち当たる壁

 

に対する人柱とも取れる、象徴的存在として屍の一歩手前で生かされている。

 

本来、ゴーン氏のみならず、氏の責任も指摘されていたが、ついにというかようやく自責の認識を吐いたことになるが、平たく解釈すれば、

「死なばもろとも」「みんなで渡れば怖くない」

と責任転嫁と取れなくはない一方で、

企業の膿を清算する覚悟と取れば、全国際企業の問題に対する人柱と見ている。

 

メディアの姿勢からも、本来ゴーン氏と同時に裁かれねばならないはずだが、その勢いは無く氏の責任追求に走るどころか、血に飢えた猟犬が「待て」を食らわされるかのように、行き場のない欲求を抑え静観を決め込むところからも見える。

 

これらの事実からも、この事件が単なる企業不正事件を超えた政府(お上)仕切りの国家間戦争と取れ、企業レベルで問題解決できなくなっており、三面記事的発想では追求しきれなくなったことからも、問題の大きさと米中貿易戦争と同意義に考えるべき問題としての視点の切り替えを急ぐべきだ。

少なくとも、日本国内の空気の中ではそれが遅れている分、後々につけを回しそうな気がする。

 

問題は、国絡みで過敏に反応してしまう日本政府・企業の国際感覚にあり、このままだとこれからの国際案件に対する日本の海外評価は、本事件でフランス側が反論するまでも無く、国際感覚のズレという課題を消化できないことも考えられる。 

例えば今当に正念場を迎えるロシアとの北方領土交渉においても、視野の狭い判断をすれば不利になるどころか、国際的な正当評価とポジションを失いかねないことにもなりかねない。

 

 

さて話が変わるが、

今のところ、日本政府も絡んでいる間は、国内において日本企業保護ムードで裁判が進む空気になっているが、今後間接的ではあるが日産の存続において後々新たな障害になりかねない記事を見たので、これにも触れたい。

 

web.smartnews.com

日産ゴーン元会長の逮捕の余波 韓国の自動車業界、崩壊前夜か? (財経新聞)

 

それはルノーの韓国側提携企業の存在で、ルノーは日本だけで無く韓国サムスンとの間にも、隠し子的企業(90%出資率で保有)を持ち、エクストレイルの派生車種を生産するという。

この韓国子会社も今回一連の事件の煽りを受けているらしい。

記事が出るくらいなので特段気にしない人もいるだろうが、人間関係に例えれば恋愛のもつれと隠し子の存在は、良い結果にならないのが常。

この関係が今後問題を更に複雑にし、新たな火種になるかもしれない。

 

出資比率の違いで、こっちのほうがルノーにとっては責任が重いとも取れ、韓国側の出方次第では、日本のエクストレイルの生産に悪影響がでなければ良いと思うが、それより厄介と思われるのは、ルノー主導で進めているグループ製品の生産設備・部品の共通化が、コストダウンに繋がる一方で、グループ各社の主導権のバランス次第で、日産がルノーひいてはフランスと交渉する際に、韓国企業関与でネックになりかねない点。

日産とルノー間で、設備投資比率や所有権的な取り決めが、実際どう結ばれているか次第だが、こうした企業体制の複雑さも国内裁判の行方をより複雑にさせるので、日本側は更にゴーン氏の身柄確保に執着し、国際的な司法認識の乖離は広がりそう。

 

こうしたグローバル企業における複雑な利権やパワーバランスによる柵が、今後日本企業のグローバル化資本提携を進める上で、国際慣れできていない多くの日本企業のウイークポイントとして考えてみた。

 

この視点で見ると日本にとって、政府は基より国民個人に至るまでのすべてに無視できない重い課題として、捉えるべき問題になっていると考えられる。